セキュリティ

センター長 園田道夫のセキュリティコラム

第23回 セキュリティ業界の未来図?Part2

ITのエンジニアの不足数は、経産省が出している数字(試算)では2030年では79万人に達する、とあります。 この数字はかなり深刻な人手不足を示していますが、その図式は近い将来AIが塗り替える可能性が高そうです。 AIを使いこなすエキスパートがAI以前に比べて10倍の生産性を得てシステム開発できるようになったとしたら、現在154万人存在するIT人材すべてがエキスパートではないとしても、平均的に2倍の生産性向上を得たら79万人も不足することはなく、むしろ人余りが起きることが懸念されます。

実際、大企業などがその道に踏み出し始めている傾向も見えます。 ただしそれは、少なくともフロンティアAIと呼ばれるベンダーのAIをそのまま使うだけであれば、これまで人材にかけてきたコストをAIに転嫁しているだけ、とも言えます。 開発競争=ユーザー獲得競争が続く限り、AIの利用料が急激に上がるようなことは無さそうですが、コスト回収に入ったら激変するかもしれません。 上昇傾向のマネジメントコストを考えるなら、それでも人件費より安い、ということになるのかもしれませんが、いずれにしても組織に大々的に導入できるのは、やはり資金力がある大企業ということになりそうです。

資金力のある大企業がどこに向かうかというと、おそらくシステムの内製化に向かうでしょう。 システム開発へのハードルが劇的に下がることを考えるなら、業務知識を翻訳して専門家にシステム開発をしてもらう、というまだるっこしい手順を踏み、高いコストを払う必然性がなくなるからです。 人間・企業に払うコストとAIに払うコストの単純比較も興味深いところですが、内製化でAIシステム開発のノウハウを自社に蓄えていく方が、作るシステムが自社によりフィットしやすいものになりそうです。 その業界に深く入り込み、業務知識を得て内製化の流れに乗っかる、というのが一つの活きる道になるでしょうか。 加えてセキュリティの知識があれば、それでも残るはずの設計レベルやプロトコルレベルの脆弱性についてAIが見つけられないものを見つけられる、という補完性を得られるようになるかもしれません。

大企業ほどの資金力が無いところは、AIを潤沢に活用できないことを前提に戦い方を考える必要がありそうです。 しかし、フロンティアAIのビジネスモデルに乗った場合、クラウドベンダー以上に重要な部分を握られ、クラウド以上に代替難易度が高い仕組みにお金を払い続けるしか無いかもしれません。 今のAIが競う汎用性を捨てて専門性に振ったAIを構築する手はありそうですが、その場合でも世界と戦うなら部品やアルゴリズムもクリアな自前AIとして作れるかどうかがポイントになりそうです。

そういうAIを武器に戦う図式を拡大してみると、ベンチャー的なアイディア勝負もできるかもしれません。 その場合はむしろ重厚長大よりは機動力の方が重要でしょうし、セキュリティという面ではこれまでにない、難しい安全性を考える必要があるかもしれません。 おそらくその部分はAIではフォローできないでしょう。

やはり、超秀才としてのAIに勝てるのは人間はその異常な発想力、ということになりそうです。 それはそれで楽しい未来だと思いますが、いかがでしょうか(笑)?